民法(債権法)改正の要点6


 

  

  10 債権

   ⑶ 総則―債権の譲渡

    ア 債権の譲渡性(第446条)

      債権の譲渡性を定めた第1項に変更はありません。
      改正前の第2項では、譲渡制限特約を付した場合には債権譲渡は無効であるが、善
     意の第三者には対抗できないとしていました。これに対し、改正法の第2項は、譲渡
     制限特約を付した場合であっても債権譲渡の効力は妨げられないとしました。
      これは、資金調達の便宜と譲受人の主観によって効力が相違するのは取引の安定を
     欠くとの考慮によるものです。しかし、弁済の相手方を固定するという債務者の利益
     も考慮し、第3項、第4項を新設しました。
      譲渡制限特約が付されている場合に、それを知り(悪意)、又は重大な過失により
     知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むこ
     とができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって対抗す
     ることができると定めました(第3項)。譲受人の主観面について立証責任を債務者
     に転換しています。
      債務者が債務を履行しない場合、前項の譲受人が相当の期間を定めて譲渡人に履行
     を催告し、その期間内に履行がないときは、譲受人に履行することを請求できます
     (第4項)。

    イ 譲渡制限の意思表示がされた債権に係る債務者の供託(第466条の2)
  
      譲渡制限特約の付された金銭債権が譲渡されたとき、債務者は、その全額を債務の
     履行地の供託所に供託することができ(第1項)、その場合、遅滞なく、譲渡人及び
     譲受人に供託の通知をしなければなりません(第2項)。供託金は、譲受人のみが還
     付請求できます(第3項)。
      譲渡制限特約付債権の譲渡は有効とされましたが、弁済の相手方を固定するという
     債務者の利益との調整として、金銭債権について、新たな供託原因を認めたものです。

    ウ 第466条の3

      前条第1項に規定する場合(譲渡制限特約付金銭債権の譲渡)に、譲渡人に破産手
     続開始決定があると、譲受人(債権全額を譲り受け、かつ、債務者その他第三者に対
     抗することができる者)は、債務者に債権全額を供託させることができます。
      供託すると、債務者は、譲渡人及び譲受人に供託の通知をしなければなりません。

    エ 譲渡制限の意思表示がされた債権の差押え(第466条の4)

      譲渡制限特約付債権を差押さえた債権者に対しては、債務者は、債務の履行を拒み、
     債務を消滅させる事由をもって対抗することはできません(第1項)。これは、私人
     の合意による差押禁止債権を認めない判例法理を明文化したものです。
      ただし、譲受人その他の第三者に譲渡制限特約につき悪意又は重過失がある場合、
     債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債
     務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができます(第2項)。

    オ 預金債権又は貯金債権に係る譲渡制限の意思表示の効力(第466条の5)
  
      譲渡制限特約付の預貯金債権については、例外として、悪意、重過失の譲受人その
     他の第三者に対抗することができます(第1項)。
      入出金の頻繁な口座を管理する金融機関の業務に支障が生じないよう、ひいては利
     用者の不利益とならないように特則(改正前と同じ規律)を設けたものです。
      預貯金債権の差押債権者に対しては、譲渡制限特約を対抗できません(第2項)。

    カ 将来債権の譲渡性(第466条の6)

      改正法は、判例法理を明文化し、将来発生すべき債権についても譲渡することがで
     き(第1項)、譲受人は発生した債権を当然に取得する(第2項)と規定しました。
      将来債権譲渡の対抗要件具備時までに譲渡制限特約が付されたときは、譲受人その
     他の第三者は悪意とみなされ、第466条第3項又は第466条の5第1項の規定が
     適用されます(第3項)。

    キ 債権の譲渡の対抗要件(第467条)

      改正前の第1項では「指名債権の譲渡」であったのを、改正法では「債権の譲渡(
     現に発生していない債権の譲渡を含む)」としています。これは、もう一種の「指図
     債権」を「指図証券」と改め、新設した第7節有価証券の第1款として第520条の
     2以下に纏めて規定したことによります。
      将来債権の対抗要件も通常と同一であることを明示しましたが、対抗要件そのもの
     については変更されませんでした。

    ク 債権の譲渡における債務者の抗弁(第468条)

      改正前の第1項は、債務者が譲受人に対して異議をとどめない承諾をしたときは、
     譲渡人に主張できた抗弁が切断されるとしていましたが、改正法は異議をとどめない
     承諾の制度を廃止し(第1項削除)、「債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対
     して生じた事由をもって譲受人に対抗することができる」としました(第1項、改正
     前第2項と同旨)。
      譲受人が譲渡制限特約について悪意・重過失の場合の特則として、①債務者が弁済
     期に履行せず譲受人が相当の期間を定めて履行を催告し、相当の期間が経過するまで
     に生じた抗弁をもって債務者は譲受人に対抗でき、②債権譲渡後に譲渡人に破産手続
     開始決定があった場合は、譲受人から供託の請求を受けたときまでに生じた抗弁を対
     抗できます(第2項)。

    ケ 債権の譲渡における相殺権(第469条)
   
      改正前の第469条は指図債権の譲渡の対抗要件についての規定でしたが、改正法
     では相殺権についての規定を新設しました。債権譲渡と相殺については明確な規定が
     なく、解釈論に委ねられていましたが、改正法は相殺に対する合理的期待を保護する
     ものとなっています。
      債務者は、対抗要件具備時より前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもっ
     て譲受人に対抗することができる(第1項)。判例法理を明文化したものです。
      それに加えて、対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権(第2項第1号)、
     譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権(第2号)につい
     ても譲受人に対抗できるものとしています。
      第3項では、譲渡制限特約につき悪意又は重過失の譲受人との関係で、「相当の期
     間を経過した時」までに取得した債権を、「譲受人から供託の請求を受けた時」まで
     に取得した債権を自働債権とする相殺をもって、それぞれ、債務者は譲受人に対抗す
     ることができるとしています。

   ⑷ 総則―債務の引受け

     改正前、債務引受の規定はありませんでしたが、判例・学説の認めるところであり、
    改正法は節名を新設してこれを明文化しました。

    ア 併存的債務引受の要件及び効果(第470条)

      併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができます
     (第2項)。債務者と引受人となる者との契約によってもできますが、その場合は、
     債権者が引受人となる者に対して承諾をした時に効力を生じ(第3項)、第三者のた
     めにする契約に関する規定に従います(第4項)。
      併存的債務の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務
     と同一の内容の債務を負担します(第1項)。

    イ 併存的債務引受における引受人の抗弁等(第471条)

      引受人は、併存的債務引受の効力が生じた時に抗弁をもって債務者が主張すること
     ができた抗弁をもって債権者に対抗することができ(第1項)、債務者が債権者に対
     して取消権又は解除権を有するときは、引受人は、これらの権利の行使によって債務
     者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことがで
     きます(第2項)。
      第1項は、引受人は債務者と同じ債務を負うことによるものであり、第2項は、取
     消権や解除権は契約当事者のみが行使できることから履行拒絶にとどまるものとされ
     ています。

    ウ 免責的債務引受における引受人の求償権(第472条の3)

      免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しない(新設)。これは、
     免責的債務引受の制度趣旨からの当然の帰結です。

    エ 免責的引受による担保件の移転(第472条の4)
  
      債権者は、債務者が負担していた債務に設定されていた担保権を引受人が負担する
     債務に移転することができますが、引受人以外の者が設定した場合は、その承諾が必
     要です(第1項)。
      (債務者が担保を供した場合については見解が分かれていましたが、債務者の承諾
      を必要としました。)
      担保権の移転には、あらかじめ又は同時に引受人に対してする意思表示が必要です
     (第2項)。
      保証人がある場合についても前二項が準用されますが、その承諾は、書面又は電磁
     的記録物でなければ効力を生じません(第3項、第4項)。


   


 

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