民法(債権法)改正の要点14


 

  

  11 契約

   ⑾ 寄託


    ア 寄託(第657条)

      改正前、寄託契約は要物契約とされていましたが、広く諾成的な寄託契約が行わ
     れ、判例もこれを認めました。
      改正法は、諾成契約としました。
      なお、消費貸借契約では、書面でする消費貸借のみを諾性契約とする改正がなさ
     れています。

    イ 寄託物受取り前の寄託者による寄託の解除等(第657条の2)

      改正により寄託が諾成契約となったことから、寄託物の受取りがなされるまでの
     規定が新設されました。
      寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで契約を解除でき、受寄者は、それによ
     って生じた損害の賠償請求ができます(第1項)。
      書面によらない、無償の受寄者は、寄託物を受け取るまで解除できます(第2項)。
      書面による無償の受寄者及び有償の受寄者は、寄託物を受け取るべき時期を経過
     しても引渡しがない場合、相当な期間を定めて催告し、その期間内に引渡がないと
     きは、契約を解除できます(第3項)。

    ウ 寄託物の使用及び第三者による保管(第658条)

      改正法は、改正前の第1項を分け、受寄者はやむを得ない事由がある場合にも、
     寄託物を第三者に保管させることができるものとして(第2項)、復代理、復委任
     の規定と整合させています。
      また、改正前の第2項を削除し、第3項を新設して「再受寄者は、寄託者に対し
     て、その権限の範囲内において、受寄者と同一の権利を有し、義務を負う」と規定
     しました。改正前は、受寄者の責任を、再受寄者の選任、監督についての責任に軽
     減していましたが、債務不履行一般の規定に委ねられることになりました。

    エ 無報酬の受寄者の注意義務(第659条)

      「無報酬の受寄者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保
     管する義務を負う。」として、改正前の「無報酬で寄託を受けた者」との文言が下
     線部のように変更されたにとどまります。
      有償寄託の場合は、規定されていませんが、寄託物という特定物の返還義務を負
     うことから、第400条が適用されて善良な管理者の注意義務を負います。

    オ 受寄者の通知義務等(第660条)

      改正法は、第1項にただし書きを加え、寄託物について権利を主張する第三者が
     訴え提起等をしたことを寄託者が知っているときは、受寄者から寄託者への通知は
     不要としました(第1項)。
      第2項、第3項を新設し、第三者が権利を主張する場合も、寄託者の指図がない
     限り寄託者に返還するのを原則とし、第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決等
     があったときは第三者に引き渡すことができ(第2項)、寄託物を寄託者に返還し
     なければならない場合には、寄託者に返還したことによって第三者に損害が生じて
     も賠償責任を負いません(第3項)。

    カ 寄託者による返還請求権等(第662条)

      寄託者は、返還時期の定めがあっても、いつでも返還を請求できます(第1項)。
      改正法は、第2項を新設し、「前項に規定する場合において、受寄者は、寄託者
     がその時期の前に返還を請求したことによって損害を受けたときは、寄託者に対し、
     その賠償を請求することができる。」として、有償寄託の場合には賠償義務がある
     と考えられていたことを明文化しました。

    キ 損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限(第664条の2)

      「寄託物の一部滅失又は損傷によって生じた損害の賠償及び受寄者が支出した費
     用の償還は、寄託者が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。」
     (第1項)「前項の損害賠償の請求権については、寄託者が返還を受けた時から一
     年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」(第2項)とする規定が新設さ
     れました。

    ク 委任の規定の準用(第665条)

      寄託については、委任の規定が準用されますが、「成果等に対する報酬」の規定
     である第648条の2が準用されないことから、文言が変更されています。

    ケ 混合寄託(第665条の2)
    
      従前から、保管場所や労力を軽減しコストを下げるために、混合寄託が利用され
     ていましたが、改正法で明文化されました。
      寄託物の種類及び品質が同一であり、各寄託者の承諾により、混合して保管する
     ことができます(第1項)。
      寄託者は、寄託したものと同じ数量の物の返還を請求できます(第2項)。
      寄託物の一部が滅失したときは、保管されている総寄託物に対するその寄託した
     物の割合に応じた数量の物の返還請求ができ、損害賠償請求が可能です(第3項)。

    コ 消費寄託(第666条)

      改正前は、消費貸借の規定が包括的に準用されていましたが、改正法は両者の相
     違に鑑み準用を最小限にしました。
      消費寄託について「受寄者は、寄託されたものと種類、品質及び数量の同じ物を
     もって返還しなければならない」として返還義務の内容を明文化しました(第1項)。
      第590条(貸主の引渡義務)及び第592条(価額の償還)の規定は準用され
     ます(第2項。)
      預金・貯金契約については、第591条第1項、第2項が準用され、受寄者は、
     いつでも返還することができます(第3項)


 

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