6ー2 遺言の執行





  1 遺言書の検認

    遺言書(公正証書遺言を除く)の保管者、保管者がない場合に発見した相続人は、相続の
   開始を知った後、遅滞なく家庭裁判所に提出し、検認請求をしなければなりません(100
   4条、1項、2項)。
    封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会がなければ開封で
   きません(同条3項)。
    遺言書の提出を怠り、その検認を経ないで遺言を執行し、又は家庭裁判所以外で開封をし
   た者は、5万円以下の過料に処せられます(1005条)。
 
   *検認は、相続人に遺言の存在・内容を知らせ、また遺言書の形状、加除訂正の状態、日付
    ・署名など検認日現在の遺言書の内容を明確にして偽造・変造を防止する手続であり、遺
    言の有効・無効を判断するものではありません。

  2 遺言執行者の指定、選任
 
    遺言者は、遺言で、遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができま
   す(1006条1項)。
    相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に対し、相当の期間を定めて就職を承諾するか
   否かを催告することができ、その期間内に遺言執行者が確答しないときは就職を承諾したも
   のとみなされます(1008条)。
    遺言執行者がないとき、又はなくなったとき(指定のないとき、就職拒絶、欠格、解任又
   は辞任)は、利害関係人の請求によって、家庭裁判所は遺言執行者を選任することができま
   す(1010条)。

  3 任務の開始等
   
    遺言執行者が就職を承諾すれば、直ちにその任務を行わなければならず(1007条1項)
   、任務を開始したときは、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知しなければなりません(同条
   2項)。
    遺言執行者は、遅滞なく相続財産目録を作成し、相続人に交付しなければなりませんが(
   1011条1項)、相続人が請求したときは、立会わせて財産目録を作成し、又は公証人に
   作成させなければなりません(同条2項)。

  4 遺言執行者の権利義務
   
    遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一
   切の行為をする権利義務を有します(1012条1項)。
    今般の改正は、本条項で上記下線部分の文言を付加して、遺言執行者は遺言の内容の実現
   のために活動すべきことを明確化し、他方、1015条において、旧規定で「相続人の代理
   人とみなす」としていた文言を削除し、遺言執行者の行為の効果を「遺言執行者がその権限
   内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対し直接その効力を生ずる」
   として、中立性や利益相反の観点からの従前の疑問点を払拭しました。
    遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる(101
   2条2項)との規定が新設されましたが、その趣旨の判例に基づいて条文化された規定です。
    遺言執行者は、権利として、費用償還請求権(1012条3項、650条)、報酬請求権
   (1018条)を有し、通知義務(1007条2項)、目録作成義務(1011条)のほか
   1012条3項が準用する善管注意義務(644条)、報告義務(645条)、受け取り物
   等の引渡義務(646条)、補償義務(647条)の各義務を負います。
    なお、経過措置として、通知義務(1007条2項)と一般的な権利義務(1012条)
   は、施行日(2019年7月1日)以前に開始した相続についても、施行日後に遺言執行者と
   なる者に適用されます。

  5 遺言執行者の復任権
  
    改正前は、遺言執行者はやむを得ない事由がなければ第三者にその任務を行わせることは
   できないとされていましたが、改正により「自己の責任で第三者にその任務を行わせること
   ができる」と規定されましたので(1015条1項)、相続人が遺言執行者に指名されてい
   る場合などに、専門家である弁護士等に遺言執行者としての任務を行わせることが原則とし
   て可能となりました。
    そして、復任についてやむを得ない事由があるときは、遺言執行者は、相続人に対し、選
   任・監督についての責任のみを負うものとされました(同条2項)。

  6 遺言執行者の報酬

    遺言執行が終了すれば遺言執行者に報酬を支払うことになりますが、遺言に報酬の定めが
   あればそれに従い、定めがない場合には、家庭裁判所に遺言執行者に対する報酬付与審判の
   申立てを行い、相続財産の状況その他の事情を基に家庭裁判所が遺言執行者の報酬を定めま
   す(1018条)。

  7 遺言執行者の解任及び辞任
 
    遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その
   解任を家庭裁判所に請求することができます(1018条1項)。
    相続財産目録の交付や相続人からの請求にもかかわらず事務処理状況の報告などを正当な
   理由なく怠った場合、相続財産の管理につき善管注意義務を怠った場合等が解任に値する例
   として挙げられます。

    遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て辞任することができま
   す(同条2項)。

 

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