民法(債権法)改正の要点11


 

  

  11 契約

   ⑷ 買戻し


    ア 買戻しの特約(第579条)

      改正前は、「不動産の売主は、売買契約と同時にした買戻しの特約により、買主
     が支払った代金及び契約の費用を返還して、売買の解除をすることができる」とし
     ていましたが、改正法は、「買主が支払った代金」の後に(別段の合意をした場合
     にあっては、その合意により定めた金額。第538条第1項において同じ。)との
     括弧書きを付加しました。
      改正前は、担保目的での利用に鑑み、利息制限法の潜脱とならないよう強行規定
     と解されていましたが、占有の移転を伴わない契約は特段の事情がない限り譲渡担
     保契約と解するのが相当とされ(最判平成18年2月7日)、再売買の予約では返
     還を要する金銭の範囲は制限されていないことから、買戻しについても柔軟に考え
     るべきとされたものです。

    イ 買戻しの特約の対抗力(第581条)

      改正法は、第1項につき、「第三者に対しても、その効力を生ずる」を「第三者
     に対抗することができる」とし、用語上整えています。
      第2項につき、「登記をした」を「前項の登記がされた後に第605条の2第1
     項に規定する対抗要件を備えた」と変更しました。保護される賃借権は、登記のみ
     ならず同項の対抗要件を備えた賃借権となります。

   ⑸ 消費貸借

     ア 書面でする消費貸借等(第587条の2)

      改正法は、要物契約としての消費貸借契約(587条)のほかに、「書面でする」
     ことを要件として、諾成的消費貸借契約を明文化しました(第1項)。
      借主は、金銭等を受け取るまでは契約を解除できますが、貸主は、解除により損
     害を受けたときは賠償請求ができます(第2項)。
      金銭その他の物を受け取る前に当事者の一方が破産手続開始決定を受けたときは
     その効力を失います(第3項)。
      契約が電磁的記録によってなされたときは、書面によってされたものとみなされ
     ます(第4項)。

    イ 準消費貸借(第588条)

      改正法は、「金銭その他の物を給付する義務を負う者がある場合において、当事
     者がその物を消費貸借の目的とすることを約したときは、消費貸借は、これによっ
     て成立したものとみなす。」とし、改正前の条文の冒頭の「消費貸借によらないで」
     との文言を削除しました。
      これは、旧債務が消費貸借により生じたものであっても消費貸借の目的とするこ
     とができるとの判例法理を明文化したものです。

    ウ 利息(第589条)

      改正法は、「貸主は、特約がなければ、借主に対して利息を請求することができ
     ない」(第1項)、「前項の特約があるときは、貸主は、借主が金銭その他の物を
     受け取った日以後の利息を請求することができる。」(第2項)との規定を新設し
     ました。
      消費貸借のほとんどが利息付であることから明文規定を置くことが望ましいとさ
     れ(第1項)、また、利息は元本受領日から生じるとする判例法理を明文化したも
     のです。

    エ 貸主の引渡義務等(第590条)

      改正法は第1項を、「第551条(贈与者の引渡義務等)の規定は、前条第1項
     の特約のない消費貸借について準用する。」と改正しました。利息付の消費貸借に
     は売買の規定が準用されます。
      第2項は、「前条第1項の特約の有無にかかわらず、貸主から引き渡されたもの
     が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主は、その
     物の価額を返還することができる。」と改正されました。
      従前の解釈、同程度に契約不適合なものを調達することは困難なことなどから、
     利息の有無にかかわらず価額返還ができることを明文化したものです。

    オ 返還の時期(第591条)

      改正法は、第2項に「返還の時期の定めの有無にかかわらず、」との文言を付加
     し、従来の解釈を明示しました。
      第3項として、「当事者が返還の時期を定めた場合において、貸主は、借主がそ
     の時期の前に返還したことによって損害を受けたときは、借主に対し、その賠償を
     請求することができる。」との規定を新設しました。

   ⑹ 使用貸借

    ア 使用貸借(第593条)

      改正法は、「使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方
     がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還
     をすることを約することによって、その効力を生ずる。」と規定し、要物契約から
     諾成契約に変更しました。

    イ 借用物受取前の貸主による使用貸借の解除(第593条の2)

      改正法は、「貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることがで
     きる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。」との規定を新
     設しました。
      諾成契約となりましたが、無償であることから貸主に一定の配慮したものです。
     なお、借主は、いつでも契約を解除できます(第598条第3項)。

    ウ 貸主の引渡義務等(第596条)

      改正前の表題は「貸主の担保責任」でしたが、「貸主の引渡義務等」に変更され
     ました。
      なお、準用される第551条も、「贈与者の担保責任」から「贈与者の引渡義務
     等」に変更されています。

    エ 期間満了等による使用貸借の終了(第597条)

      改正前は「借用物の返還の時期」という表題でしたが、改正法は「終了」に着目
     し、第598条では「解除」事由を規定して整理し直しました。
      内容的には第1項と第2項本文が維持されています。第3項は改正前の第599
     条に対応しています。

    カ 借主による収去等(第599条)

      改正前は、第598条で「借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物
     を収去することができる。」としているのみでしたが、改正法は、第2項に収去権
     の規定を残し、更に、解釈上認められていたものを第1項、第3項に明文化しまし
     た。
      第1項は、借主の付属物収去義務を定め、借用物から分離できない物又は分離に
     過分の費用を要するものについてはこの限りではないとしています。
      第3項では、借用物に生じた損傷につき原状回復義務を負うものとし、借主に帰
     責事由がない場合にはこの限りではないものとしました。

    キ 損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限(第600条)

      第1項は、改正前の第600条そのままの規定となっており、貸主の損害賠償請
     求権、借主の費用償還請求権は貸主が返還を受けた時から1年の除籍期間にかかり
     ます。
      第2項として、「前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時か
     ら1年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」との規定が新設されました。 
      これは、用法違反による損害賠償請求権は10年の消滅時効に服するところ、貸
     主が知り得ない間に消滅時効が完成している事態も考えられることから時効の完成
     猶予の規定を設けたものです。



 

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